• 2024.03.19
  • マニュアル作成ノウハウ

取扱説明書をわかりやすく作成する4つのポイントとは?

製品を購入すると同梱されている取扱説明書ですが、最近は印刷されたものだけでなく、電子データ化されたものが増えています。また、Webサイトからダウンロードできたり、多言語に翻訳されたりなど、ユーザーに広く行き届くようさまざまな工夫がなされています。

本記事では、取扱説明書の基本的な作り方6つのポイントやわかりやすい説明書の作成の4つのポイントについて詳しく解説します。取扱説明書の作り方や、作る際に知っておくべき知識があれば知りたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

取扱説明書とは?

まず取扱説明書とは、製品の取り扱い方や操作方法などを説明するための書類です。ユーザーが製品を扱う前や利用中に操作方法やエラーの解決方法を調べ、使用するために作成します。

もし取扱説明書がなかった場合を想像してみてください。ユーザーは危険な使い方をしてしまうかもしれません。その結果、ケガをしてしまうかもしれませんし、使用場所で火災が発生するなど甚大な被害をこうむる可能性もあります。

また、「いつもと違う動作をした」「動きが遅くなった」など製品が普段と異なった状態のときに、故障かどうかわからず使い続けていいのか迷ってしまいます。

このような事態からユーザーを守るために取扱説明書は必要です。また、販売者が製品についての問い合わせやメンテナンスをきちんとしたフローで請け負うためにも、取扱説明書は大事な存在です。最近では、本やパンフレットのような印刷物で製品と同封されるだけでなく、電子化されたPDFファイルの形式でCD-ROMやメーカーのWebサイトからダウンロードから配布される利用方法も増えてきました。

業務マニュアルと取扱説明書の違いとは?

では、業務マニュアルと取扱説明書の違いについて解説します。自分の会社で日常的に目にする業務マニュアルと製品に同封する取扱説明書は一見すると同じような内容に思えるかもしれませんが、まったく性質が異なっています。

業務マニュアルと取扱説明書の最大の違いは「そのマニュアルがどのような層を対象としているか」という点です。

業務マニュアルは業務の全体像や手順、注意点、事例などを記載した文書です。イラストや写真も用いて説明されていますが、取扱う人物が一定以上の知識を備えていることを前提として作成しているため、基本的な内容はシンプルな説明に留まっている場合や専門用語を使っている場合もあります。また対象は「企業や組織でその業務に携わる従業員やスタッフ向け」です。

一方で、取扱説明書は「製品を利用するすべてに人向け」に、利用方法をわかりやすく解説しています。エラーを解決するためのFAQページやよくあるトラブルシューティングなどはできるだけ詳しく、そして簡潔にわかりやすく記載しています。最近では多言語翻訳して世界中の人々が読み解けるように変化しています。

次に取扱説明書を作成するうえでの6つのポイントを解説していきます。

取扱説明書の作り方とは?6つの基本ステップ

取扱説明書を作るときには、基本の6つのステップがあります。

 1.目的を明確にする
 2.スケジュールを決める
 3.記載する内容と構成を決める
 4.トラブルシューティングのページを作成する
 5.検索ページを作成する
 6.PL法(製造物責任法)に準拠した注意項目を準備する

1.目的を明確にする

目的が定まらないで作成をすると、いつ誰が使うべきものなのかが分からず、取扱説明書は次第に活用されなくなる恐れがあります。初めに、取扱説明書の目的・対象者・利用シーンまで具体的に決め、目的を設定すると更新もしやすくなり、活用される取扱説明書が作成できます。

2.スケジュールを決める

リリースの期限を把握し、作成に要する時間の全体像と、情報のまとめやタイトルの決定、本文の記述など、それぞれの工程でどの程度の時間がかかるかを詳細に計画していきます。ガントチャートなどを利用するとより効果的でしょう。取扱説明書を作成するときは、繰り返し見直しを行い、フィードバックを取り入れながら改良すると、より質の高い取扱説明書を作成できます。

3.記載する内容と構成を決める

この時、「取扱説明書をどのような層に向けて作成し、どのようなゴールに導くのか」といったコンセプトも定めておくと良いでしょう。全体の流れを鑑みずに項目を個別に記載・修正していくと、全体を通して読んだ時に不足している情報や重複している部分などが生じる可能性があります。項目ごとの読みやすさや正確さも重要ですが、全体の構成を意識すれば、ユーザーによりわかりやすい取扱説明書になります。

例えば家庭向けの電化製品であれば、実際の使用シーンを想定した内容とするなど、受け手が理解しやすいように配慮するのも重要です。また、わかりやすいレイアウトや魅力的なデザインにも注意しましょう。さらに、製品やサービスの詳細を熟知した担当者が取扱説明書を作成し、読み手に誤った情報を伝えないよう正確に記載するよう留意しましょう。

4.トラブルシューティングのページを作成する

トラブルシューティングとは、よくある質問やエラーの対処法をリストアップして、ユーザーが自力で解決できるような情報を提供するページです。トラブルシューティングの存在により、何らかの問題が発生した際、事前に製品利用時によく発生するだろうと想定できるエラーや疑問をまとめて文章化しておくと、ユーザー自身でトラブルを解決しやすくなります。

また、トラブルシューティングを記載しておけば、企業に連絡が入る回数も少なくなります。例として、使用状況に応じた交換時期や、月々の電力使用量など、ユーザーが気になるポイントを明記しておきます。よくある質問の回答を記載しておくと、問題が発生したときに、ユーザーは企業に連絡せずに済むでしょう。

5.検索ページを作成する

すべてのユーザーが製品やサービスを利用する前に取扱説明書を熟読するわけではなく、気になる箇所のみを都度読むという利用者も数多く存在します。また、ページ数も増えると、探すのに時間がかかります。索引や

言葉の意味を解説した、用語集を用意するとより親切です。取扱説明書全体を網羅する検索ページを必ず作成しておきましょう。

6.PL法(製造物責任法)に準拠した注意項目を準備する

PL法(製造物責任法)とは、「製品の欠陥によって生命や身体、または財産に被害が生じた場合に、製品の提供者に対して被害者が損害賠償を起こせる」とする法律です。この項目は企業の法務部門が主担当となる場合が多く、取扱説明書の作成者が担当することは少ないかもしれません。

このPL法の存在を念頭に置き作成しなかった結果、製品の不備で使用者がケガをしたり、他のアイテムが破損して新しく購入する義務が生じたりする場合に、取扱説明書に警告表示が不適切だった場合も含まれます。

例えば、コーヒーメーカーで他の液体を使用したため、火傷を負ったユーザーがいるとします。この際、取扱説明書に「コーヒーメーカーには水のみを使用してください」と明確に表記していなければ、賠償請求されるリスクが高まります。このような背景から、取扱説明書の整備は非常に重要であり、専門家に確認してもらういましょう。

わかりやすい取扱説明書の作り方とは?4つのポイント

ここまで、6つの基本ステップについて解説してきました、次にわかりやすい4つのポイントについて解説していきます。

 1.簡潔に書く
 2.誤読が起きない書き方をする
 3.図やイラストを活用する
 4.1文1メッセージを意識する

1.簡潔に書く

丁寧に説明しようとするほど、文章が分かりづらく長くなります。情報を盛り込みすぎると、読者が理解しづらくなる可能性があるため、必要な情報だけを記載するのも重要です。文を何度か読み直し、不要なワードがないか、伝える順序が正しいか、不足している情報がないかなどを客観的に見て、文章の質を高めましょう。

2. 誤読が起きない書き方をする

取扱説明書を読む側に立って書いていきましょう。冗長な文章や専門用語の過度な使用は避け、できるだけシンプルかつ明瞭な文章で書きます。その際には3つの点を意識するとより誤読が起きにくくなります。

・文章は受動態ではなく「能動態」で表す
【悪い例】 「ボタンが押されると、動作が始まります」
【良い例】 「ボタンを押すと、動作が始まります」

前者は受動態の文章で、「ボタン」が主語になっています。こういった文章では読み手は「自分ではない誰かがボタンを押す」と勘違いをする可能性があります。そこで後者のように「読み手」が主語になった能動態の文章にすれば、シンプルで理解しやすくなります。

・二重否定を使用しない
「〇〇がないことはありません」という文章には「ない」と「ありません」という2つの否定が含まれており、つまり「〇〇がある」と同じ意味になります。この表現を二重否定と呼び、回りくどい表現で読み手を混乱させる可能性があるため使用しないようにしましょう。

・流れを意識してストーリー性を作る
取扱説明書を作成する際は、読み手の行動を想像しながら全体の流れを組むのも大切です。例えば、「使い始める前に」という項目を最初に構成し、操作中や操作後において想定される疑問については、巻末に「困った時は」といった項目を載せるとさらに良いです。

3.図やイラストを活用する

文章だけで伝えるのが難しい時や長文になる場合には、イラストや図、写真で表現すれば、ユーザーが直感的に内容を理解できるようになります。例えば機器の操作方法を説明する場合、手順を文章で記載するより操作ボタンのイラストで表現した方が、瞬時に認識してもらいやすいでしょう。

また、専門的なイラストのほか、「やってはいけない例」「危険な例」をわかりやすいイラストやアイコンで表現するなど、ユーザーに伝わりやすい表現を心がけましょう。

4.1文1メッセージを意識する

1つの文が最小限の指示に絞られていると、読み手にとって理解しやすくなり、漏れなく手順を踏めます。

【悪い例】容器のフタを半分開け、AパックとBパックを取り出した後、Aパックの内容を入れ、600Wで2分加熱して、Bパックを混ぜ込みます。

【良い例】
1.容器のフタを半分開け、AパックとBパックを取り出す
2.Aパックの内容を加える
3.600Wで2分加熱する
4.Bパックを混ぜ込む

一連の文章を通読すると、最初と最後だけが印象に残るといわれます。細かい手順を一度読んだだけで覚えるのは難しいと思う人がほとんどです。上記のように、1文に1つの手順だけを記載すれば、具体的に何をすればよいのか理解しやすくなります。手順の番号も、「1の後は2」というように、読み手をスムーズに案内するのに効果的です。

まとめ

「取扱説明書をかりやすく作成する4つのポイントとは?」と題しまして、ご説明してまいりました。

取扱説明書はユーザーに製品を安全かつ便利に使ってもらうために、情報をわかりやすく伝えるものです。製品を初めて扱う人をイメージして、わかりやすい表現でPL法に配慮して安心して製品を利用できる説明書を作りましょう。また、製品の仕様に変更があれば更新し、どの製品のバージョンに対応した取説か、バージョン管理も重要です。

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