• 2023.06.28
  • 生産性向上

生産性向上とは?企業を発展させるキーワードを知ろう

企業活動において昨今強く発せられる「生産性」という言葉。しかしながら、その言葉の指す意味や方向は何なのか?きちんと把握されているという方は少ないのではないでしょうか。「生産性」という言葉が意味するところは、投入された資源から作り出した生産物の割合を表す指標であり、できるだけ少ない資源をもとに多くの生産物を生み出すことで、生産性を高くできます。

企業活動において、生産性を向上させることで利益を多く生み出し、ひいては事業を拡大させるための礎となります。そういった意味でも「生産性」について意識して活動していくのが重要といえます。

ここでは生産性の向上とは何か?なぜ生産性向上が必要なのか?を説明してまいります。そして、生産性の向上に必要なキーワードについてまとめていきます。ぜひ皆様の企業活動の生産性の向上を考えるきっかけになっていただければと思います。

なぜ生産性は向上しなければいけないの?現状と危機を把握する

生産性向上がなぜ求められているのか?考えたことはありますでしょうか。現在、日本は国を中心として大規模な生産性の向上を実現するための施策を進めています。例えば、「働き方改革」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進」といった言葉を聞いたことがあるかと思いますが、それらは生産性の向上を実現していくための施策となります。

では、なぜ国家レベルで生産性の向上に努めようとしているのでしょうか。
その背景には、大きな2つの課題があります。

・労働力人口の減少

日本は世界的に見ても抜きんでた少子高齢化が進んだ国です。その影響を受け、15歳以上の人口のうち就業者と完全失業者を合わせた数値となる労働力人口が減少傾向にあります。つまり、人手不足の状況は今後も改善していく見込みがない状態であるのを示しています。

・国際的競争力の弱体化

日本の国際的競争力は、IMD (国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)が作成する「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)」において2022年版で34位です。2019年に30位となって以降は4年連続で30位台となっており、この順位は、アジア・太平洋地域(14カ国中)でも、10位と沈んでいます。中でもビジネス効率性分野の「生産性・効率性」項目は、日本の弱みとされ改善されない傾向が続いています。

この2つの課題をクリアにしていくためにも生産性の向上は重要な命題となっています。
つまりは、インプット(投入された資源)に対するアウトプット(生産物)の比率を増やすことでしか解決の糸口はないのです。インプットをもう少しかみ砕いて言えば、人や設備投資、活動時間を指し、アウトプットは生産量や価値といったものを指します。

ただし、原材料やエネルギー、設備や機器を使って製品やサービスを生み出すにあたっても、それを実現させる人は欠かせません。しかし、前述のとおりアウトプットを生み出す労働力人口の減少、つまり生み出す力の確保が困難となっているのが現在の日本です。したがって、いかに効率的に生産するかが大命題となっているわけです。

生産性向上と業務効率化の違い

生産性向上とあわせて使われる「業務効率化」という言葉があります。業務効率化とは、無駄の多い業務の工程、いわゆる「ムリ」・「ムダ」・「ムラ」を排除して改善することを意味します。

業務効率化は、業務のプロセス全体と課題を見える化(洗い出し)を、まずおこないます。そして前後の業務や関連する他部門とのやりとり、全体フローなど様々な要素を確認していきます。このように業務効率化とは、部分的な点にとどまらず全体を着目した上で見直しを考え、改善をおこなっていくものです。

業務効率化を実現した結果、一人ひとりが仕事をやりやすくなったり、短時間でできたりというのはもちろん、企業や組織全体の生産効率のアップにつながります。そう考えると、生産性向上のポイントの1つに業務効率化がある、とイメージすると分かりやすいかもしれません。

業務効率化と生産性向上の違いは、業務の手段(コスト)を中心に据えるのか、成果に置くのかという点で異なっています。業務効率化は成果を出すために、いかにコストを抑える(削減する)かを考えるのに対し、生産性向上は成果をいかに大きくする(最大化)するかを考えていきます。

逆に、生産性向上の観点では、業務を削減するだけでなく、生産性の高い事業にあらたに投資を集中(追加)もおこないます。

つまり、生産性向上は成果を軸として考えらており、多くの場合に業務効率化よりも上位の視点で話されます。業務効率化を進めた結果、生産性向上に寄与することはありますが、選択肢の1つに過ぎないのです。生産性向上を実現するためには、業務効率化以外の考えや取り組みが存在することを認識しておきましょう。

生産性向上の取り組み前に知っておくべき、4つの型

生産性向上には、大きく分けて4つの取り組みの「型」=大きな方針があります。
生産性向上は、場当たり的なことをおこなっただけでは成功しません。取り組みを始める前に、まずはその方向性を決めて、明確な指針を立てなければ成功にはたどり着けません。ここでは方向性を定めるに当たって、生産性向上の取り組みの4つの「型」をご紹介します。

【生産性向上の取り組みの4つの型】

・インプット縮小型
インプット(投入資源)を減らし、アウトプット(生産量や付加価値)は維持

業務の効率化やコストの削減によりインプット(投入資源)を減らしますが、生産量や付加価値といったアウトプットを維持することで生産性の向上を実現します。インプット(投入資源)を減らすことを中心に据えた取り組みです。

・インプット大幅縮小型
インプット(投入資源)を大幅に減らし、アウトプット(生産量や付加価値)は維持

採算の取れない業務や事業の廃止や統合、リストラなどをおこない、事業全体を通じてインプット(投入資源)を大幅に削減しつつ、アウトプットを維持することで生産性を大きく向上させます。前述した「インプットの縮小型」をより強力に突き詰めた取り組みです。インプット(投入資源)を減らすことを中心に据えている点は同じです。

・アウトプット拡大型
インプット(投入資源)を維持しつつ、アウトプット(生産量や付加価値)を拡大

インプット縮小型とは反対に、インプットは維持しつつ、アウトプットを増やして生産性向上を実現していきます。例えば、ITツールや機器を導入したり社員教育によるスキルアップをおこなうなどして、アウトプットの量の増大を中心に据えた取り組みです。

・アウトプット大幅拡大型
生産性の高い事業にインプット(投入資源)を集中し、アウトプット(生産量や付加価値)を大幅に拡大

現状の各業務のアウトプットを分析し、もともと生産性が高い事業についてインプットを大幅に増やします。その結果として、アウトプットを大きく拡大するという取り組みです。
先に説明した「アウトプット拡大型」をより強力に突き詰めた取り組みです。アウトプット(生産量や付加価値)の増大を中心に据えている点は同じです。

生産性向上に取り組むにあたり以上の4つの「型」を理解しつつ、自社の現状(組織や業務内容、サービスや製品の特性など)を把握してみましょう。どの「やり型」を中心に据えて取り組んでいくか考えてみるのもよいと思います。

生産性向上を取り組むために抑えるべきポイント

ここでは生産性の向上にあたり、具体的にどんな作業をしたらスムーズに進むのか紹介します。各作業のポイントを抑えつつ、皆様の現状に則した取り組みを考えていただければと思います。

・現状を分析する

やはり、まずは自社の現状にきちんと向き合い課題を理解しなければ始まりません。業務を可視化し、どのような課題が存在するのか、ネックとなる要因は何かを把握していきましょう。

その際は、可能な限り業務に携わる多くの方に意見を聞いていきましょう。経営者や管理者といった立ち位置、現場の従業員では見えている課題やコストが異なるものです。多くの側面から理解していけば、より的確な取り組みが見えてきます。

・業務を効率化する

現状を分析し、課題がみえたら業務効率化に取り組んでいきましょう。分散している同じ業務をまとめたり、作業の属人化による負担や効率悪化、業務の質の低下なども修正が必要です。

その中では、あらたにITツールを導入したり、新しい素材や設備・機器の導入も検討すべきです。また、それにあわせたフローの見直し、人員の配置転換も行い業務を改善していきましょう。

・進捗と情報を共有する

実際に効率化を進めていくにあたっては、現状を把握できる仕組みや情報の共有が容易にできる環境の整備をしておかなければいけません。現在の情報が得られなければ、適切に効率化が実現されているのかも分かりません。そして、作業そのものがきちんとおこなわれているのかいないのかすら、把握できません。

そうなってしまうと、管理者も的確な指示も出せなければ、現場も動けないといった状況に陥ります。また、情報共有の実現で、異なる現場で改善策を共有したり、あらたなトライができたりする機会が増えます。より生産性を上げる可能性を生み出すきっかけになる可能性もあります。

そのためには、数値での指標を設けることが大切です。紙でのチェックのようなアナログな情報共有ではなく、ITツールを利用したリアルタイムでの分析や再利用可能な情報共有を考えていきましょう。

・社員教育をおこなう

一見、コストアップや効率的でないような社員教育も個々人がスキルアップすれば、生産性の向上に効果が上がります。

例えば、一個人が多くの業務をこなせるようになり、短時間で業務をおこなえるようになれば生産性の向上につながります。研修というと大掛かりなものを考えてしまうかもしれませんが、意見交換や短時間の勉強会など、定期的にスキルアップの環境を整えることで生産性の向上やその効果を維持することができます。

まとめ

「生産性向上とは?企業を発展させるキーワードを知ろう」と題して、ご紹介してまいりました。生産性向上は、事業の拡大や企業の発展、継続において重要な手段となります。生産性の向上を実現していくにあたっては、現状をきちんと把握・分析をして課題を確認することが大切です。

そして、見えてきた課題から無駄な業務を洗い出し、改善に取り組んでいく必要があります。

取り組みには、インプット(投入資源)を減らしたり、あらたな設備やITツールを導入したりといったいくつかの方法があります。

今回は、取り組みの目安となる「型」やポイントをご紹介させて頂きました。現状を的確に分析していただき、自分たちに合った方法を選択し、生産性向上を実現していただければ幸いです。

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