• 2024.08.30
  • 業務効率化

2024年問題とは?起こる影響と対策をわかりやすく解説

日本の産業界を大きく揺るがす危機的状況として、警鐘が鳴らされている「2024年問題」をご存じでしょうか。2024年問題とは、2024年4月に適用開始された「働き方改革関連法」(正式名称:「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」)により、物流・運送・建設・医療など、日本を支える業界で解決しなければならない労働環境問題のことです。ある実態調査によれば、この大きな問題を知らない人が半数にも上ると言います。2024年問題は、物流業界において重要な転換点です。労働基準法の改正により、時間外労働の上限が規定され、物流業界に深刻な課題が生じています。私たちの生活の中で切っても切り離せない「物流の2024年問題」について、問題の詳細と対応策をわかりやすく解説していきます。

「物流の2024年問題」とは

物流の2024年問題とは、労働基準法改正に伴い、時間外労働の上限が法律で規定されたことに伴い発生する問題の総称です。具体的には、労働時間規制による物流への影響や、トラックドライバーの拘束時間改善基準による問題が懸念されています。2019年4月に施行された労働者の時間外労働に関する規制で、例外的に物流・運送・建設・医療業界などに対しては、5年間の猶予期間が設けられていました。その猶予期間も2024年3月末で終了したため、2024年4月から物流・運送業界のトラックドライバーに対しても時間外労働規制が適用されています。

労働時間はどう変わるのか

施行された法律において、実際どのように労働時間が見直されるのでしょうか。具体的な労働時間に関して以下のように変わります。

1か月の拘束時間

  • 2024年4月以前
    原則293時間を超えないようにする。ただし、1年のうち6か月は総拘束時間の3,516時間を超えない範囲で、1か月の拘束時間を320時間まで延長が可能。
  • 2024年4月以降
    拘束時間は、1か月の拘束時間を284時間かつ年間3,300時間を超えないものとする(例外あり)。

1日の拘束時間

  • 2024年4月以前
    13時間を超えないものとし、仮に延長する場合であっても限度を16時間とする。
  • 2024年4月以降
    13時間を超えないものとし、当該拘束時間を延長する場合であっても限度を15時間とする(例外あり)。

1日の休息時間

  • 2024年4月以前
    勤務終了後は継続8時間以上の休息期間を与える。
  • 2024年4月以降
    休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上は与えるように努め、継続9時間を下回らないようにする(例外あり)。

連続運転時間

  • 2024年4月以前
    4時間を超えないこと
    ※1回の運転が10分以上かつ、合計30分以上中断せず運転する時間を「連続運転時間」とする

  • 2024年4月以降
    4時間を超えないこと
    ※駐停車ができないなどやむを得ない場合、連続運転時間が4時間を超える場合は30分まで延長可能
     なお、これまで運転の中断時に荷積みや荷卸しの作業が認められていたが、休憩でなければ運転の中断とみなさない、と変更された

物流の2024年問題がもたらす大きな影響

物流の2024年問題によってどういったことが起こるのでしょうか。
物流業界全体に及ぼす影響として、ドライバー不足や輸送力の低下が懸念されており、2030年には輸送力の供給不足により「全国で約35%の荷物が運べなくなる」とも試算されている中、運送企業や荷主企業にはどのような影響があるのでしょうか。

運送会社の場合

  • ドライバーの拘束時間の減少
    長距離輸送の場合はどうしても長時間労働が発生しやすいため、今までどおりに物が運べなくなり、法律を遵守した運送経営を行うことが難しい状況になると予想されます。
  • 売上、利益の減少
    これまで通りの運行ができなくなると、1日に運べる荷物の量が少なくなり、利益の減少へとつながります。そうかと言って、運賃を上げれば価格競争に敗れて顧客離れが起こる恐れもあり、安易な値上げは悪手になる可能性があります
  • ドライバーの収入減少
    残業時間が規制されれば、その分ドライバーが受け取れる残業代も少なくなります。ドライバーが十分な収入を得られなくなって生活に困窮する恐れがありますし、収入減少による離職が起これば人材不足に陥る可能性もあるでしょう。

荷主企業の場合

  • 輸送費用の増加による利益率の減少(物流コストの上昇)
    トラックドライバーの人員確保のために運送会社が賃金を上げることが考えられ、その場合荷主側の輸送費用が増加することに繋がり、総じて物流コストの上昇が考えられます。
    (ドライバー不足を補うために賃金アップを行うと、その影響から運賃自体を値上げせざるを得なくなることから、総じて物流コストの上昇が考えられます)
  • 長距離輸送の依頼が難しくなる
    トラックドライバーの労働時間削減のため、長距離輸送を受けられなくなる運送会社も出てくることが予想されます。そのため、配送ルートの最適化を図るなどの更なる物流の効率化を意識した対応が求められます

  • 輸送スケジュールの見直しが必要となる
    トラックドライバーの拘束時間減少により、これまでどおりの輸送スケジュールでは対応できなくなるケース場合も出てきます。そのため、荷待ち時間が長時間にならないよう調整を図ることや、配送スケジュールの最適化などが必要となります。

主に上記のような影響が出てくると言われています。
では、この課題に対しどのような対策を行うべきなのでしょうか。

物流2024年問題のために行うべき対策

物流業界が従来のサービスを維持し、成長を続けるために対処するため、さまざまな対策を講じています。以下に、代表的な対策をいくつか紹介します。

1. 労働時間の短縮と効率化

労働時間の短縮は働き方改革関連法に準拠するための基本的な取り組みです。しかし、単なる労働時間の短縮だけではなく、業務効率の向上が求められます。そのためには、以下のような対策が有効です。

  • デジタル化の推進
    配送計画や在庫管理においては、IT技術を導入し、業務プロセスを自動化・効率化が考えられます。これにより、トラックドライバーの負担を軽減し、配送効率を向上させることが可能です。
  • 業務の見直し
    無駄な作業を排除し、配送のルートや荷物の積み込み方法を再検討し、効率的な配送を実現します。例えば、共同配送や、複数の荷主による混載運送を行うことで、効率を高められます。
2. 配送ネットワークの再構築

物流の供給能力を維持するためには、配送ネットワークの再構築が必要です。これには、以下のような手段があります。

  • 中継輸送の活用
    一つのドライバーが長距離を運転するのではなく、中継点で荷物を別のドライバーに引き継ぐ「中継輸送」を導入することで、労働時間の削減が可能です。この方式では、各ドライバーが短距離を担当するため、休憩時間や労働時間の制約を順守しやすくなります。
  • ハブ&スポークシステムの導入
    主要な拠点(ハブ)を中心にして、そこから周辺地域(スポーク)に配送を行うシステムです。この方法により、拠点ごとの配送効率を高め、全体の物流網を最適化できます。
3. 労働力の確保と多様化

物流業界におけるドライバーの不足は、2024年問題の核心です。これに対処するため、労働力の確保と多様化が求められています。

  • 女性や高齢者の雇用促進
    女性や高齢者が働きやすい環境を整備し、労働力を高めます。例えば、労働時間の柔軟化や、小型トラックの運転など、負担が少ない業務を用意して、これまで物流業界に参入していなかった層を取り込むこと、労働力確保の1つの手段と言えます。
  • 外国人労働者の受け入れ
    人手不足を補うため、外国人労働者の採用も有効な手段です。ただし、文化や言語の違いがあるため、研修やサポート体制を充実させる必要があります。

これまで物流業界内では少数層であった方に活躍・早期戦力化してもらうには、労働環境の改善が重要です。そこで、業務を覚え職場に慣れて定着してもらうためにも、業務マニュアルを整備し、教育にも注力するのが重要です。

4. 技術革新と自動化の導入

物流業界では、技術革新や自動化も進んでいます。これにより、ドライバーの負担を軽減し、物流効率の向上が可能です。

  • 自動運転技術の開発
    自動運転トラックの導入により、長距離輸送の効率が劇的に改善される可能性があります。現在、実証実験が進められており、将来的には実用化が期待されています。
  • ドローンやロボティクスの利用
    配送センター内での作業や、ラストワンマイル配送(消費者への最終配達)において、ドローンや自動化ロボットを活用し、人手を削減し、迅速な配送を実現できます。
5. 荷主との協力とコスト分担

物流業界単独での対策には限界があるため、荷主との協力が不可欠です。特に、労働時間の制約に伴うコスト増加については、荷主と物流企業の間での適正なコスト分担が求められます。

  • 適正料金の設定
    物流企業が適正な料金を設定し、荷主に理解してもらうことで、コスト負担の公平性を確保します。また、適正料金を確保すると、労働環境の改善やサービスの質向上が期待されます。
  • 需要予測の精度向上
    荷主と連携して需要予測の精度を高めると、過剰な在庫や無駄な配送が減らせます。需要予測の精度向上により、効率的な物流が実現し、コストの削減につながります。

このように、2024年問題に対しては様々な対策があります。しかし、もちろん全てを同時に進めるのは難しいでしょう。まずは自社が直面する可能性が高い課題に対して、どう対処していくべきかのイメージが重要です。

仮に人材不足に悩んでいる企業であれば早めに募集を始め、時間外労働が慢性化している企業であれば業務効率化を検討する、といった対処を検討すべきです。

働き方改革関連法が改正された背景として、ドライバーの慢性的な長時間労働の是正による労働環境の改善が挙げられます。早い段階から対策することで、「ワークライフバランスが取りやすい」「残業代が高くなり、短い時間でも十分な収入が得られる」といったポジティブな影響につながります。

まずは、トラックドライバーにとって働きやすい環境の整備を第一に、対策を立てて実行することが、自社の成長や社員の満足度向上につながるのではないでしょうか。

まとめ

「2024年問題とは?起こる影響と対策についてわかりやすく解説」と題してご説明してまいりました。2024年問題で、物流業界は良くも悪くも大きく変化せざるを得ない状態です。

物流業界は日本の生活基盤を支える重要なインフラです。

スーパーや百貨店に並んでいる食品や衣類・雑貨など、あらゆるモノが人の手で運ばれお店に陳列され私たちは買い物ができます。医療で利用する医療機器や薬なども同じで、物流があるからこそモノは病院に届き、私たちが安心して医療を受けられる状態になるのです。

物流なくして、人の生活は成り立ちません。物流業界・そして現場で働く方々によって私たちの生活が支えられていたと言っても過言ではありません。(先日公開された映画「ラストマイル」で痛感しました)

消費者側からすると、これまでは頼んだものが当たり前のように、2~3日、早ければ1日で荷物が届く世界でしたが、5~6年後はそうはいかなくなるのではないでしょうか。でも、それで良いと個人的に思います。

一人ひとりがその生活スタイルに慣れていけば問題ありません。物流業界だけでなく、そこに関わる企業や消費者が意識を変えていくことが、本当の意味で2024年問題の解決へとつながっていくのではないでしょうか。

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